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一人暮らし体験談
タイムマシーンに乗って(2006年未明)
子供の頃、近所の公園でよく遊んだ。
その公園にはアヒルの池があって、
アヒルはみんなの人気者であった。
月日は流れ、大人になってみると
アヒルなんて見ることはない。
近所を歩いても、街中を歩いても
アヒルなんていない。
ましてやアパートの廊下にアヒルなんているわけがない。
今の私にとってアヒルは特別な存在だった。
「バォーーンッ・・」
それはすごい音だった。
午前11時頃、玄関付近で爆音発生。
時速40キロで飛んできた布団が、
アパートに直撃したような音だった。
気になったが以後何の音もしなかったので
確認はしなかった。
午後2時頃になり、さっきの爆音のことなど忘れていた。
食料がなくなってきたので、買い物に行こうと身支度をし、玄関を開ける。
「んっ?」なにか視線を感じた。
至近距離に何かがいる。
ふっと横を見るとそこにアヒルがいた。
私は驚いた。アヒルも驚いているようだ。
2人は見つめ合う。
どうしていいかわからない私は視線をそらし、
何事もなかったように買い物にでかけた。
なんであんなところにアヒルがいるのか、
私は買い物しながら考えた。
スズメだったらわかる。
カラスでもわかる。
でもアヒルはわからない。
そこで思った
「きっとタイムマシーンに乗って未来から来たのだ」と。
22世紀に発明されたタイムマシーン。
これから発射というときに近所で
遊んでいたアヒルが間違って乗車。
くちばしでスイッチオン。
アヒルは慌ててタイムマシーンから脱出⇒アパートに激突。
うん、これならつじつまがあう。
きっとそうに違いない。他にはありえない。
だってアヒルがいたのは3階の廊下だったからだ。
アヒルはそんなに飛べないはず。
子供の頃よく遊んだアヒルの池のフェンスは
高さ1メートルくらいだったし。
未来のアヒルに会えたということで
スッカリご機嫌になった私は買い物を済ませ帰宅。
そこにはまだアヒルがいた。
アヒルは驚いているようだったが、
私は笑顔で応えた。
食事を済ませ、アヒルのことなど全く忘れている私は
布団に入った。夜の11時頃だった。
「パサッ、・・パサッ」
なにやら音がする。聞き覚えのない音だ。
気にせず目を閉じる。
「パサッ、パサッ、パサッ」
明らかにおかしい。10分くらい音が続いている。
私は恐る恐るのぞき窓に目を当てた。
そこに見えるは、隣人さんだった。
私の部屋の玄関前に立ち、
傘を開けたり閉めたりしている。
非常に困った顔をしている。
若干、腰も引けてるようだ。
原因はすぐわかった。ピー太郎の仕業だ。
きっと隣人さんは鳥が嫌いなのだろう。
私は助けようと思った。
いや助けなくてはいけなかった。
一人暮らしの生活は、
隣人さんの人柄によって良くもなり悪くもなる。
私は隣人さんのおかげで
快適な一人暮らしができている。
だから助けたい。
とりあえず、トランクスだとかっこ悪いので
ジーパンをはいて、念のためヘアースタイ・・・
「カチャ、バタンッ」
同じアパートに長年住んでいると、
玄関の開け閉めの音で何号室の人かわかるようになる。
今の音は隣人さんに間違いない。
私は前のめりになった気持ちを落ち着かせ、
ジーパンを脱ぎ脱ぎして布団に入った。
翌日、ピー助はいなかった。
今頃、「過去から無事帰還したピー子ちゃん」とかいって
人気者になっていることだろう。
注)アヒルではなくマガモでした。
マガモは飛べるみたいです。
それにしても、なぜ3階まで飛んできたのか。
・・不思議だ。
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